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英語に自信がないを終わりにする

英語には敬語がないって本当?~エーゴのケーゴの話 その1~

約 4 分

英語には敬語がない?

「英語には敬語がない」なんて、誰が最初に言い出したんでしょうか。英語には敬語がないなんて、真っ赤なウソですヨ! 社会の中に人間関係があって、言葉でコミュニケーションをとる以上、敬語がないなんていうことがありえるでしょうか。おそらく、その文化によって、敬意の対象、敬意のあり方、あらわし方、そして言葉そのもののしくみがみんな少しずつ違っていて、それがズレている部分があるために「ない」というような誤解を与えるのでしょうね。

英語にも、もちろん敬語があります。でも、日本語の敬語とは、体系がまったく違います。日本語の敬語には、みなさんもご存知のとおり、「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」「美化語」などがありますね。特に「尊敬語」は相手を高める言い方、「謙譲語」は自分を低めることで敬意をあらわす、という仕組みができています。英語には、これと同じような枠組みがあるわけではありません。でも、だからといって「英語に敬語がない」といってしまうのは、ちょっと早計です。英語にも、敬語はあります。

「敬語」という言い方でしっくりこなければ、「敬意をあらわす表現」だと考えてもよいでしょう。そして、「敬意」に限定せずに、話し手と聞き手の人間関係のありかたを表現するやり方だと考えると、より理解が深まるのではないでしょうか。

人間関係のありかたの表現

敬語というと、上下関係があるときにあらわれやすいということは、みなさんパッと思いつくのではないかと思います。でも、本当に上下関係だけでしょうか。

たとえば知らない人に道を聞くとき、敬語を使いますよね。その時あなたとその人の間には、上下関係がありますか? また、友達の出版記念パーティーのスピーチを頼まれた、なんていう場合には、どんなことを気にして話しますか? いずれも言葉選びの基準は「上下関係」ではありませんね。知らない人にものをたずねるときは、「親しいか親しくないか」、つまり「親疎」という要素が関わってきます。また、人前でなにかを話そうとするときは、「正式な場かカジュアルな場か」といったことも、言葉選びの判断基準となるでしょう。

言葉遣いの基準このように、言葉を選ぶときには「上下」「親疎」「フォーマル・カジュアル」「尊敬する・貶める」「丁寧に言う・ぞんざいに言う」といったさまざまな要素があり、これらが複雑に絡み合って実際の言葉遣いが決定されていくのです。これは、何語であっても、どんな文化でも、程度の差はあれ起こることです。でも、どんな要素がどれぐらい重視されるのか、どんな局面でどの要素が適用されるのか、それが文化によって違うんですね。

たとえば日本語の場合、店員と客という組み合わせの会話であれば、そこにはある程度の上下関係があるとみなされると思います。どんなお店かにもよりますが、店員は、客に対して「上位の人」「なれなれしすぎない」「丁寧」といったことを心がけて話すのではないでしょうか。でも、英語圏の国だったらどうでしょう。英語圏といっても広いので一概にはいえませんが、多くの場合、客と店員の間に日本ほどの「上下関係」は認められないでしょう。どちらかというと「対等」「親しみを込めて」話すというのが一般的な態度のように思われます。こういったところに着目してしまうと、「英語には敬語がない」かのように見えるのかもしれませんね。英語でも、はっきりとした上下関係がある場合、たとえば「先生と生徒」「上官と下士官」「金払いのいい客と高級店の店員」といったケースでは、はっきりと敬意を込めた話し方がされるといってよいでしょう。

単純に「尊敬語や謙譲語がない」ということと、「敬意を込めた表現がない」というのは同じことではありません。英語にも、もちろん敬意を込めた表現もあれば、その反対に貶めるような表現もあります。考えてみればあたりまえのことですね。英語を話すとき、「敬語がないから」といって、いつでもダイレクトな表現が許されるとは考えない方がいいでしょう。上下関係や親しさのあり方が違うので、それに適した言葉選びができるようになるとよいですね。

丁寧に話すときの要素

では、実際に「丁寧に話したい」「ぞんざいに話したい」「敬意を込めて話したい」といったとき、つまり「丁寧さの度合いを調節して話したい」と思ったときに、具体的にどのように言葉を選んでいったらよいでしょうか。これもいくつかの要素に分けて考えることができます。

私は、以下の4つの要素が挙げられると考えています。

  1. 語彙的丁寧
  2. 文法的丁寧
  3. 婉曲的丁寧
  4. 重畳的丁寧

次回の「英語には敬語がないって本当?~エーゴのケーゴの話 その2~」は、この4つの要素について、もう少し詳しくお話したいと思います。お楽しみに!