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英語に自信がないを終わりにする

Miwa’s book shelf #2 “Speaking American”

約5分

Miwa’s book shelf

このコーナーでは、Miwa の本棚から、とっておきの英語の本をご紹介していきます。

小説などのようにストーリーのおもしろさが売りの本ではなく、見て楽しい本、なるほどと膝を打つような本、英語の文化や生活の理解につながるような本など、ちょっと変わり種をご紹介していきたいと思います。

“Speaking American”

Speaking American2冊目にご紹介するのは、”Speaking American -How Y’all, Youse, and You Guys Talk” です。

このサブタイトルの意味がわかりますでしょうか。あまり見慣れない形かと思いますが、”y’all” は you all のことです。”youse” は、you の複数形とでもいえばいいでしょうか。”you guys” は相手が複数のときに呼びかけるときに使う、おそらくもっとも一般的な言い方ですね。どれも、「あなたたち」と言いたいときの、アメリカ国内で使われている方言です。つまり、この本のタイトルは、『アメリカ語を話す―あなたたち、あなたたち、そしてあなたたちがどのように話しているか―』ということになります。

アメリカにも方言がある

そう、この本は、アメリカの方言を取り扱った本。これだけ狭い日本でもこんなに豊かな方言があるのですから、英語にも方言があるのはあたりまえですね。私たちが習うのは、“標準的な”英語ということになっていますが、なにをもって標準的とするかは、この本を見ると、なかなか難しいということがわかると思います。

Speaking AmericanSpeaking AmericanSpeaking Americanまず、冒頭の y’all、youse、you guys について見てみましょう。まずは、アメリカ全土で you guys を使う人は、約半数。だいたい西海岸から北の方にかけて you guys が分布しており、y’all が優勢なのは南東部だということがわかります。

そして、you guys でない残りの地域に、実際にはもっとたくさんのバリエーションがあることがわかります。y’all を使うのが28%。y’all 系統ではありますが、you all とフルで発音するのが約10%、単に you というのが10%。you の複数形である youse/yous/yins などを使うのは、全体の約1%です。

you の複数形がある地域をさらに細かく見てみると、ピッツバーグの周辺にかたまっていることがわかります。yins という形は、いちばん濃い紺色でもゲージが25%なので、そんなに大勢の人が使っているというわけではありませんが、それでもこの地域では一定の人たちが使い続けている形なんですね。

「あなたたち」という一語を表現するだけでも、これだけの地域差があるんですね。私が今まで触れた英語では、やはり you guys という言い方が主流だったと思います。意識せずにこの言い方でいいのだと思っていましたが、こんなにいろいろな形があるのかと、改めて驚いてしまいました。

Speaking American
Speaking American

炭酸飲料のことをなんと言う? 時間は? 発音は?

Speaking Americanこれまで多くの人と話してきた中で、「炭酸飲料」は呼び名が分かれているな~、と感じていました。

私自身は、短期留学でワシントン州にいたことがあるのと、アメリカの東側に住んでいたことがあり、どちらもたまたま soda が主流の地域でした。ですから、炭酸飲料は、コーラでもスプライトでもセブンアップでも、なんとなく soda と呼べばいいのだろうと思っていました。でも、違う呼び方をする人も確かにいた。じゃあ自分が使うとき、教えるときはなんと呼べばいいのだろう? と、ずっとうすぼんやり思っていた謎が、これでやっと解けました。呼び方に地域差があって、どれも正解だったんだなあ、と納得です。

Speaking Americanこちらの地図は、時刻の「3:45」をなんと読むかです。やはり three fourty-five と quarter to four が優勢のようではありますが、quarter till four というのも聞いたことはありました。これも、地域によって若干のかたよりが見られるようです。そして、quarter of four という言い方もあるんですね! 私はこれは聞いたことがありません。こちらは少数派なので、あまり耳にしないものではあるようですが、生徒がもし使っていたら「不正解!」と言って訂正してしまいそうです(>_<)

Speaking Americanこちらのページは「caramel という語にはいくつ音節があるか」という、発音に対する意識差です。東海岸では car-a-mel と音節が3つあると意識されているのに対し、西海岸から中部ではcara-mel のように2音節だと考えられている、ということです。手持ちの辞書を見てみると、英和辞典とメリアム・ウェブスター系には car-a-mel 式が多く、コリンズ・コウビルド系とオクスフォード系は cara-mel としているようです。こんな部分でも、決して正解がひとつに決まっているわけではないものなんですね。とても興味深いです。。

コラムも充実のオシャレ方言本!

この本、コラムも充実しています。「この地域の出身者のフリをするならこんなしゃべり方」「この地域の独特の言い方はコレ!」という例のひとつひとつがとてもおもしろく、たくさんの発見があります。この本をしっかり勉強していくと、もしかして相手の話し言葉から、その人の出身地を当てることができるようになるかもしれません。現に、この本の筆者はラジオで出身地当てを披露していますよ。(外すときもあるようですが。笑)

Speaking American
Speaking American

そして、このコラムについている写真がまたシャレオツ。私は日本語学が専門なので、日本の方言の本や方言地図などもたくさん見てきましたが、こんなにきれいな色で、こんなにオシャレな図版の本にはなかなかお目にかかりません。インテリアとして置くのにもぴったりの1冊です。

眺めているだけでも楽しい “Speaking American -How Y’all, Youse, and You Guys Talk”。ぜひ読んでみてくださいね。

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